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< 概要 >
anemoneは不思議な世界に迷い込んだある少女の物語です。少女はどんどん世界の階層を降りて行き、その奥で、なくしていた大切なものを取り戻します。

本作は、未来に対して希望の持てない日本という国で、それでも生きる希望とは 何なのか、自分なりに考え、制作した作品です。
現在、日本の年間自殺者数は、この十年間、三万人を超えているといいます。イラク戦争で亡くなった米兵の十 にも及ぶそうです。 みんな、子供の頃は、毎日や明日が楽しみで生きていたはずなのに、それが大人になったときにそうではなくなり、ルーチンワークになってしまうことが多いような気がします。僕には日本が抱える根本的な問題を解決する力はありませんが、アニメーションの力を使って、誰かに少しでも夢や希望、未来に生きる勇気を感じてもらえることが出来ればいいなと思い、今、自分なりに出来る表現で制作しました。

< ストーリーコンセプト >
本作は「自己の回復」をキーワードに制作しました。
誰にとっての「I(アイ)」に成りうるかということをコンセプトに、本作の主人公を アイと名付けました。
世界中のI(私)が何らかの理由で追い込まれていて、今という瞬間を終わらせるために自殺しようとしている。そういったキャラクターの感情を想像した時に、アイという少女は過去の悲しい記憶の延長線上に、現在や未来を認識しているのではないか、と考えました。もし、アイという人物が現在の状態に満足していないのなら、過去の認識を変えることができれば、明日や未来に希望を抱く事ができるのではないか――本作はそのことをメインコンセプトに制作を行いました。

< ビジュアルデザインと制作 >
今回の世界感のビジュアルはアイの心の世界を象徴させています。彼女が何らかの原因で精神的に非常に不安定な状態であると考えます。脳内の神経細胞であるニューロンが石のように硬化したイメージを構築していきました。そして、からまった鉄やワイヤーは、現実のしがらみや、童話に出て来るお姫様がかかる呪いのようなものをイメージしながら表現しました。彼女を高校生くらいの年齢に設定したので、通学の際に観ているであろうモチーフをいたるところに半壊させた状態で配置しました。不安定さを際立たせる為にオブジェクトの配置をねじっていき、夢の中のような次元の崩れた世界観を表現する事に努めました。

特に苦心した作画と3Dの主観映像の部分はワンカットに二ヶ月ほどかけて制作しています。キャラクターに関しては、水彩の塗りをほどこすなど、手間をかけました。
2009年に熱血宇宙人の完成後から、anemoneは作業期間としては約一年半、PVやドラマの仕事、研究活動と平行しながらの作業だったのですが、僕のメインの作画作業時間としては約2935時間かけることが出来ました。(アバウトに計算していたので、ずれがある可能性があります。)もちろん、僕の作業時間だけではなく、いろんな方々にアイディアを考えて頂いた時間、実際の作業時間も含めるとさらに膨大な時間のかかった本当に大事な作品です。

anemoneが少しでも多くの人々に希望を届けますように

山元隼一
Anemone
制作スタッフ

監督・絵コンテ
編集・コンポジット
山元隼一

音楽
武田十季

脚本
山元隼一
ヤマモトタカシ

作画
山元隼一
中戸崇広

作画協力
田中彩乃 森大貴

背景美術
山元隼一
イサイシズカ
ひだかしんさく

3DCG アニメーション
古屋隆介
山元隼一
園田大也

制作協力
真狩祐志
甲斐舞子

デザイン協力
吉田三沙子 近藤絢子

指導教員 松隈浩之